母、智恵子

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三歳の娘を抱き、昼下がりの住宅街を歩いていた。ぼんやりとした頭で、片手に下げたレジ袋の中の肉のことを心配していた。季節は夏。早く帰らねばと思っていた。娘も暑いだろう。 ある家の前で、ふとした涼しさに足を止めた。和風の造りをした家で、塀の奥で水が飛んでいるのを見た。庭で水撒きでもしているのだろう。 そんなことを考えていると、視界がゆがんだ。体が倒れる。それを察知した私は、レジ袋を落として娘を守った。地面に体を打ち付ける前に、私は意識を失った。
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