第一章 未練なケーキ

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 冷凍庫で冷たく冷やされているケーキはパンダの顔をしているケーキだ。去年のクリスマスにその時付き合っていた男と一緒に食べるために買った。  「いくら冷凍っていっても、賞味期限過ぎてるんじゃないの?大丈夫?」  なおも食い下がる紀子。  いや、彼女はケーキが食べたいんじゃない、クリスマスから3ヶ月も経っているのに、まだ落ち込んでいる私を励まそうとしているんだろう……そう思いたい。  「いいのよ。私が一人で食べるから」  「ふ?ん、一人で食べれるなら食べたらいいけど……できたら今度はいい人と食べなよ?。あんた、男見る目なさそうだから」  辛口の中にも優しさが滲む紀子の言葉で涙腺がゆるんできた。  ああ。やっぱり、いいやつだなあ。紀子。
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