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7月、夏休みに入って、高校生のバイトと一緒になる時間がますます増えた。学校がないので男子達はバイトが終わってからよく皆で遊んでいるようだ。
その日私は仕事が終わって車に乗り込もうとしたところを、晶につかまった。
「松井さん、ドライブ連れてって。」
この子が私を追っかけるようになって、もうずいぶん経つ。ホントに私一筋なのか、それとも他でもうまい事やりながらあわよくば年上のお姉さんに遊んで欲しいだけなのか、よく判らない。どっちにしてももういいかげん長いので、そろそろ終わりにして欲しい。
「・・・・・どこに行く?」
「え、いいの?やったぁ!」
無邪気に助手席に乗り込む。職場の高校生を、こんな時間に連れ回すのは主義じゃないんだけど、まあ夏休みだし、そろそろはっきりさせておきたかった。軽く食事をして、海辺に車を停めた。
「あんたさあ、どういうつもりなのよ。」
私はタバコをふかしながら訊いた。
「どういうつもりって、ずっと言ってるじゃない。松井さんが好きだって。」
「・・・・まじ?」
「俺普段ふざけてるように見えるかもしれないけど、本気だよ。ホントに、松井さんが好きなんだ。」
「で、私もずっと言ってるでしょ。あんたには気がないって。」
「・・・・・・・松井さん、彼氏とか、好きな人とか、いるの?」
「いないよ。」
「だったらさ、とりあえず付き合ってみてくれてもいいじゃない。職場の高校生ってのが問題なんだったらバイト変えるし、そうでなくてももうすぐ卒業だし。」
「最初の印象でダメだった人ととりあえず付き合ってみて、好きになれたためしがないんだ。そういうのは時間をかけた分だけお互い傷つくだけで、意味ないよ。」
「・・・・・・専務の愛人だって噂、本当なの?」
「何それ。じゃあ、まあ、そういう事にしといてよ。あんたとは付き合えない。」
「そんなのダメだよ!愛人なんて!俺ならちゃんと松井さんだけを好きでいるのに!」
「・・・一体どうしたらあきらめてくれるのよ。」
私はやれやれとため息をつきながら言った。
晶は泣きそうな顔をして下を向いてしまった。
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