第1章

10/13
前へ
/13ページ
次へ
病室に着くといつものように窓際のベットの横に腰掛けた。 ベットの横の棚にはいつも新鮮な花がいけてある。 聡太のお母さんが好きな花だ。 空気の入れ換えに窓を開けると、爽やかな潮風が病室に入り込んだ。 私は鞄からお弁当を取りだしベットに寝ている聡太に話しかけた。 「見て!今日はだし巻き玉子作ったの上手でしょ」 お弁当を聡太に広げて見せたが返事はなかった。 「今日山田さんにミカン貰ったの。聡太の分は冷蔵庫入れとくね」 ミカンを網から一つ取りだし残りは冷蔵庫に入れた。 「早く謝ってくれないかな?もう怒ってないんだけど」 だし巻き玉子を半分に切って口に運んだが、少し甘さが強かったような気がした。 聡太が病院に入ってもう一年が経とうとしていた。 あの日私は聡太に言われた言葉が許せずずっと家で泣いていた。 次の日、休みではあったが傷付いた私は熱を出して一日中家で寝ていた。 夕方くらいだっただろうか、突然の悪天候に窓ガラスがカタカタと音を鳴らしているのに目を冷ました。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加