第1章

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そんな悪天候の中、船が一槽戻ってないことに気付いたのは漁長の私のお父さんだった。 ずぶ濡れの合羽姿で家に帰ったお父さんから私は信じられない言葉を聞いた。 「聡太の船が難破した」 それを聞いた女の私にはどうしようも出来なかった。 漁師町に住む誰もが知っているが、嵐で豹変した海に一人で乗った船が難破すると、見つける事すら至難の技で、聡太のお父さんもそれで命を失っていた。 私は着替えると嵐の中急いで聡太の家に向かった。 家でどうしようもできず一人不安な聡太のお母さんの側にいようと・・・ 聡太が見付かったのは嵐が過ぎさった次の日の事だった。 港から東の沖にある磯に大破した船の瓦礫と一緒に頭から血を流した聡太が見付けられた。 病院に運ばれた聡太は奇跡的に一命を取り戻したが、脳に大きなダメージを受けていて目を冷ませる事なはなかった。 それから半年、私は変わり果てた聡太に会う勇気が持てず、半年後にようやく自分の気持ちを落ち着かせる事が出来たので、聡太の見舞いに行けるようになった。
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