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「こんな形で、あなた様の血に巡り会うとは思ってもいませんでした」
そのか細い声は、広い海の上で、そっと零れた。
流れる長い髪は艶やかで、月光を浴びて、美しく輝いているかのようだ。
蒼白い顔は病的で、細く優しい形をした両の目からは、涙がスーっと流れ落ちた。
「あなた様と別れて、もうどれだけの時が経ったのでしょう。もう月日の経過すら分かりませんが、これがわたくしの運命だったのかもしれませんね」
彼女がいるのは、陸地の見えない海の上。
そして、乗っているのは朽ち果てた平田舟。
もう、浮かんでいるのが不思議なほど、ボロボロで、いつ沈んでもおかしくはない。
そんな舟の上に、もう一人。まだ幼さの残る少年がいた。
普段はあまり外に出ないのだろう。
ほっそりとした身体に、割りと白い肌。その双眸は閉じられていて、意識を失っているようだった。
「あなた様の寝顔にそっくりすぎて。すぐに血筋を理解してしまいました。この日のため、わたしくがここにいるならば、あなた様の大切な方の仕打ちも、意味があったのかもしれませんね」
語りかけるように話す彼女に答えるものはいない。それなのに、優しく柔らかいその声は、愛しき誰かに想いを告げるような、そんな雰囲気に包まれていた。
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