第1章

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元々、別部署で働いていた三枝を 今のところへ異動させたのはもう1年ほど前か。 大手ゼミナールで3年間の経験がある、と前振りがあった割には使い物にならない素人同然講師だった。 どんな環境でその経験を積んできたのか その前職場さえ疑わしい。 うちには出来ない講師はいらない。 だから、こっちに鞍替えさせたんだ。 面接に来た時から 本人もそれをある意味武器にしている節もある それくらい、綺麗な脚。 と、瑞々しい身体。 ベッドの上で折り畳まれたそれは 今から彼女のしようとしている事を際立たせる。 三枝が手にした10メートル超えの黒い麻縄は 既に二つに折られている。 首からかけた長い縄に4つの結び目が作られていく。 もう、慣れたもんだ。 手際よく巻き付けて準備した縄を 前から回し後ろから前へと 結び目に引っ掻けていくことで亀の甲羅のような模様が その見目に麗しい身体に浮かび上がっていく。 三枝の好物は、緊縛。 しかも、今日は最高級の、自縛だ。 だらしなく開いた唇から滴る涎と 縄が食い込まんとするクチビルから流れるヨダレ。 熟れて熟れてどうしようもないくらい熱い息を漏らしている三枝は、ただそれだけで達してしまうはしたなさを あれよという間に見せつけた。 「相変わらず我慢出来ない女だな、お前は」 泣き入るような細い声で謝り 次いで、お願いします、深く頭を下げて ガクン、と崩れそうな身体を持ち上げ 目の前に見事な亀甲柄を携えた豊かな身体を晒す。 煙草を咥えたまま、余った縄で その両腕を拝むようにして背中で縛りあげた。 「……いいな」 なかなかの出来具合に 濃い煙を吸い込み、充分に堪能してから長く吐き出した。
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