第1章

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女の堕ちていく表情(カオ)ほど 淫らで美しいモノはない。 誰もが知るようなホテルの高層階で 1本の黒い縄に面白いように翻弄される姿が 優美であり、滑稽でもあった。 もう30分もここから動かない三枝は ずっとこうしている。 時々、見上げては強請る様子を見せ その気がないと分かると、またそこに戻り ずっと、ずっと緩やかな曲線を描くように舌を這わせ続ける。 絶妙な舌技といえばそうなんだろう。 なんせ、萎えさせる事がないんだから。 普通なら、飽きるか 我慢できなくなるか やっぱり、そんな事を考えてもどちらかというと 射精にまで時間がかかる方なんだろうか。 飽きるか、といえば三枝、お前は飽きないのか? 掌を見せた瞬間に嬉しそうなカオになる。 額から頭頂までゆっくりと滑らせ、そこから側頭に下り 撫でてやる。 綻んだ目が、伏せられて それまでは適度な間隔でしかなかった喉奥までの誘(イザナ)いが顕著になった。 深くまで吸い込まれるそこにぶつかるのは器官のどこなのか。 頸椎の1番か、2番を押しているのは間違いない。 この行為は三枝の次の好物だ。 どれだけ苦しくても 口頭蓋(コウトウガイ)が役割を間違えて呑み込もうとしても 喉を衝かれて 本当に目元が眩むその際の際まで離す事は出来ない この性を見いだした事に 感謝すらされている。 離れようとしたその後頭部を掴み、ググ、と押し付けると 形容し難い音が、上がってくる。 待ち望んだ刺激をやろうか。 なぁ、三枝。 もう足元の吹き溜まりは洪水だ。 汚れて、荒んでいく三枝の気高い意識がフラフラと消える前に 昂りきった欲と、体液をその粘膜の奥に吐き出した。
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