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尚子はノーマルな女。
何もかもが普通で、何もかもに逆立てられない。
要は、楽でいられる女だ。
これほど安らぐ事はなかった。
「明日は新規の採用面接が入ってるんだ」
「あぁ、もうそんな時期なのね」
「今年はどんなのが入ってくるかな」
「お茶にする?ビール?」
風呂上がり、夫婦の団欒を欠かさず醸し出し
必ず1日の括りをコミュニケーションする出来た妻。
「あぁ、お茶にするよ」
よほどの事がない限りこれが無かった事はない。
「冬期講習はどうするの?」
「今、考え中」
こうして少し痛い所を突いてくるのも
信頼のおける関係であるからこそだ。
「明日はご飯いらないわね?」
「ああ、みんなと済ませてくる」
「飲みすぎないでよ」
フフフと笑って、決まった湯飲みをスイと差し出したその手をパッと掴み
「じゃあ、今日にしようか」
「あらあら」
「飲みすぎてくるから、勃たないと困るだろ」
「飲み過ぎなきゃイイじゃない」
尚子は、6つ下の女盛り。
夫婦の契りには積極的に参加するタイプだ。
娘もとうに成人していて
何年も何十年も続けた夫婦、という繋がりが酸化してくる場合もあるが、うちはソコも円満だった。
まあ、円満と思わされているだけかもしれないが
それでも構わない。
この生活があるからこそ
仕事も、趣味も、全てが滞る事もなく
進んでいくんだ。
例え、今、さっき
他の女をどうこうして、そこにぶちまけてきたって
それは、それで
これは、これ。
こんな男も世の中には星の数ほどいるからな。
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