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ヒトという生き物は実にうまく都合よくできている。帳尻を合わせようとして、滑稽な程よく働く。
だが、結局は誘惑に負けてしまう生き物、それがヒトだ。
全てのノルマを片付けた後は暗い部屋でも充分だった。
暁の闇に紛れて幾度となく繰り返される営みは
面白いように売れる。
ツマラナイ女達だ。
金さえ出せば直ぐに差し出すのか。
うんざりとがっかりの狭間で
グレーの枠の中に青い光を放つモニターをずっと見ていた。
今まで何度となく目の当たりにしてきた光景を少しだけため息を吐きながら見つめ、1日我慢をした煙草を咥えてライターを手に取った。
カシュ、と音がして
ガスライターのエネルギー切れに再度、ため息を吐く。
「おいおい、何も今じゃなくていいだろ」
勝手にこぼれた独り言。
愛用するガスライターに向けられているのか
それとも、自分に向けているのか……
代わりになるものを探してはみた。
手元にはライターもマッチもない。
「冗談(ウソ)だろう……」
吸いたい、と思った時でないと意味がない。
舌打ちを披露したい気分を押さえながら
指で挟んだ煙草を唇から遠ざけて三度目、今度は長いため息を吐き出した。
目の前で展開されるのは縺(モツ)れた二つの身体。
完全に酔いしれているソレを
蔑みと憐れみを混ぜ込んだ視線で刺し
わざとらしく咳払いをしながらプツ、と消し去り、深く座った椅子から立ち上がる。
どんなに気高く振る舞っているような女でも
甘い言葉と
響く誘いで
簡単に転がせるようになる。
闇になった部屋を振り返ると、そこには青い光の残像。
人間の記憶と曖昧な錯覚に居心地の悪さを覚えながら
今度こそ部屋を後にした。
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