第6章

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云々と悩んでいても解決なんてしやしない。 そう思ったのはやっとここに来てのことだった。 いつもの駐車スペースにサックリと車を停めて 緑の髪を靡かせた女のデカイ看板を見上げる。 よく見てみると 「笑ってるのか」 日が暮れる寸前の空は朱く燃えていて こないだ食べた熟れた柿を思い出した。 ドロリと甘い、特によくそうなった部分から出た果汁が皿一面に広がる、そんなことを。 ドアが開いてすぐ見た先で落胆する。 いないのか。 外の夕焼けと同じくらい色がついていたところに 何故か影がかかった気がした。 ずっと、どうしいてるか気になっていた。 あれから、何の連絡もなく 勿論、こっちから何かをすることもなくて そのまま音信不通。 夏の 煮えきらない何かをちゃんと正さないと 頭と身体がうまく機能しない。 もっと解決しなきゃならないことが身近にあるだろう。 それよりも、こっち、だなんて。 家庭崩壊もいいとこだ。 薄い笑いが出た。 「いらっしゃいませ」 いつものように本日のコーヒーを頼む。 マグカップか、紙カップかを聞かれたので紙と答えてそれを受け取った。 この時期になるとカップやスリーブが紅になるのか。 クリスマスをすぐに連想させるその色に なんとなく零れた笑みはさっきの薄情なものとは違うだろう。 色気づいた女子大生だ。 大学にももうすっかり慣れて たくさんの新しい関係だって出来たかもしれない。 予定だってところ狭しと詰め込まれているんだろうな、そんな風に思ってカウンターの前を通り過ぎた。
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