第6章

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吹き出しそうになった。 どうしても、不審者だからだ。 誰がって? 肩を竦めた姿はまるで怒られた猫が首の後ろを掴まれてるようだ。 さらに大きな黒い目が “見ちゃいけない、見ちゃいけない”と、でも言うようにこっちを見たいのに、見られないでいる。 「ベルト」 わざと自分のをビーっと伸ばして ガチャリと音をたてる。 スタートの合図が静かに車を震えさせた。 「なにか予定あった?」 今更だが一応、聞いてみることにした。 後々、恐ろしいくらいに文句を言われても困るからな? 「あったんならそこまで送」「ございません!」 力強い返事、大いにけっこう。 いつでも動ける準備は万端、後は 斉藤、お前だけなんだけど? チラ、とバックミラーを確認してから ついでに隣の猫に視線を移した。 夏はあんなに大胆だったのになんだ 何故そんなにビビるようなことがある? 「きゃぁっ」 自分のベルトを外して 身体を彼女の方まで乗り出し左手をベルトに伸ばして、さっきと同じような音を出しながら引っ張った。 「ベルト、って 言わなかった?」 すぐ近くで覗き込むと明らかな挙動不審を訴える斉藤。 やっぱり視線を合わせるのを拒否するように 黒い瞳が右往左往する。 腹の下から擽ったいような笑いが沸いてきて、なんだか無性に、弄りたくなった。 ああ、これが 可愛い、ということか。
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