第6章

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「あの夜の勢いは、どうした」 へっ? 息を吸い込むのと同時に聞こえた小さな疑問詞。 黒い瞳がやっぱり忙しなく動き、揺れるのを見てほくそ笑む。 器用だな、おい。 目の前の可愛らしい生き物を 喰べたい 初めてあの夏の夜のことを後悔した。 舞台は最高だった筈。 満点の星に 思ってもいなかった告白 まんざらでも無かった自分自身 あの時にこの女を自分の中に取り込んでおけば 何かが違っていたのかもしれない。 後の祭りだ。 ……そうか、後の、祭りか。 よく後悔の念で表現されることが多いようだが 祭りが終わったあと 神様に備えたものを下げて行われる宴のことだ。 「なぁ斉藤」 「な、な、なんですか」 台詞まで切羽詰まった感じになるなんて もう煽ってるとしか思えない。 「なんで笑ってるんですか」 斉藤 遥の挙動不審さに。 とは、言わなかったが、ずっと楽しくて 愉しくて仕方ない。 斉藤がもし、あれから誰かとどうなっていようと 誰かと既に何かをしていようと もう、関係なかった。 「いや、悪い、楽しいから?」 「は?!」 斉藤 遥の視線がやっと絡まった。 しかも 見開き度200%で。
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