第1章

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まるで別世界だ。 自分は何もしていなくてもストーリーが語られていく。 こんなものだったのか、オレが目指していたものは。 微かな自問にさえ答えが見いだせずにいるのに、滞りなく運んで行く人生のシステム。 沢山のルールの中にいて、今はそのルールさえも自由の手助けをしてくれる。 ここに来ていても、誰も文句一つ溢さない。 押し付けてきた仕事でさえも、責任を持って全うされている。 そして、昼間から20ほども歳の離れた女に己を勃てて、いいように弄び、これからもっと酷い事をするというのに。 誰一人それを咎めない。 まぁ、いいのか。 いつか、罷り通らなくなったらまた考えればいいのか。 小さなノックの後、三枝がいつもと変わらない様子で戻ってきた。 「No.68様、ヤヤさん、お帰りになりました」 「ごくろうさん」 入り口付近で立ち止まったままの三枝の目の前まで進み そこで跪かせてさせる事はただ一つ。 「ほら 次のチャイムが鳴るまでに何とかしろよ?」 頭を撫でながら抑揚を付けずに吐いたセリフに ぶるりと震わせた身体。 細い指がカチャカチャと拘束を緩めていく。 ピタリと肌に添ったボクサーパンツの中で中途半端に撓る一竿。 指を下から這わせてウエストのゴムをゆっくりと下げると まだダラリと脱力しているそれが剥き出しになった。 「オーナー……」 「ん?」 「失礼、します」 顔を擦り寄せてそこに柔い刺激を与えこっちの支配欲を奮わせ、自らの従属欲を肥えさせる。 三枝の目論見通り中心に1本の鋼が通った。芯が固まり始めるとやっとその根元と楕円の境目に舌が這う。 最初は手荒な事はしない。 徐々に覚えさせるんだ。 まぁ、三枝はどちらかというと、最初から飛ばしたパターンだが。 壁に手を付いて 「三枝、凭れて」 冷たく言い放ち、腰を進める。 「死にそうになる前に教えろよ」 じわりと潤んだ三枝の瞳から大量の涙がこぼれ落ちた。 全てを吐き出そうとする無様な音が聞こえた後 きっと何度も口の脇から零れた液体は消化を促すそれ。 自分勝手に振り、三枝の目が白と黒とを往き来するそれを見ながらもう、ほぼ空っぽの胃の中へ不快物を送り込んだ。 倒れ込んで咳き込んだ三枝を抱き上げ 部屋の電話からマンションの事務所へ繋ぎ、顧客の対応を頼むと、そのまま風呂場へ飛び込んだ。
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