第1章

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「クリーニングに出さなきゃなぁ」 汚れたお互いのスーツを脱ぎ捨てて、シャワーに打たれながら抱き合う、中年の男と、まだまだ持て囃される年頃の女。 「申し訳、ありません」 「いや、よかった ……お前もよかっただろ? びっちゃびちゃだ」 指がすんなりと三枝に埋まってゆく。 動かすとそれは厭らしく絡み付き、離してくれそうにない。 「、ァ、オーナー……」 「お好きな時にどうぞ」 畝が大きく襞を揺らし、絶えずすぼまり続ける指の付け根。 グリグリ、とスリスリを繰り返し 膨らんではすぼまって、また膨らんで 何度か繰り返した後、ビリビリと痙攣するように足を閉じる。 「あ」の連続音がタイルに響き渡った。 ぐ、と突き当たりを探し当てると逃げるように跳ねた腰を掴まえてそこを解す。 ナカが気持ちいいと感じるのにはある一定の時間がかかる。 誰でもが最初から、この鈍感な筋肉の中で快感に到達する訳ではない。 根気よく、的確に、慌てずに貪り続けてやっと繋がる快楽を教えてやると 枯れない泉からは絶えずドロドロとサラサラが滴り 立っていられないくらいに膝が笑い 突然、プチんと意識が飛ぶ。 こんな事さえも、もう思いのままだなんて オレはよっぽどイイ前世を歩んできたんだな。 ご先祖様に大感謝だ。 供養も欠かさず続けているからか。 当たり前の事が出来ない輩が増えてきている。 当たり前の事をいかに丁寧に根気よく続けられるか、それを踏まえて新しい事に乗り出せるか。 「三枝」 完全に脱力した身体は女でもズシリとするが、まぁ、まだ三枝くらいなら抱えられる。 ふと、思った。 この子は幸せなんだろうか。 きっと、結婚だってしたいに違いない。 こんなアテのない生活ではなく、自由に身体を捧げたい相手だっているかもしれない…………。 夜中近くになってやっと目が覚めた三枝が平謝りをする。 職務放棄だと自分を蔑むあたりが彼女らしい。 「そんな事はない、疲れたんだろう」 頭を撫でると猫のように目を細めた。 「送っていこう 着替えられる?」 こうして、俗に言う、飴と鞭を使い分ける都合で 彼女を束縛している事は抗えない事実だった。
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