第1章

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環状線沿いのコーヒースタンドは車が停められるとあっていつも人気だ。 今日もほぼ満車のそこに空きを見つけ高難易度な縦列駐車をピタリとはめ込む。 まだまだ鈍ってはいないその感覚と ヤバイくらいの技にほくそ笑み 目的を果たす為に車を降りた。 コーヒー独特の香りが鼻腔を占領するのは仕方のないことだ。 が、こうなってくると必然 「グアテマラ」 飲みたくなるだろ。 「あちらオレンジのランプの下からお出しします」 右手に進むように促され そこで本日のコーヒー「グアテマラ」が出てくるのを待った。 ちょっとだけ一服。 何度もしつこいようだが、一日働ききった後の一杯も 堪らないだろ。 狭いコーナーの一つ手前にやっぱり空きをみつけてそこへ滑り込んだ。 テーブルには紙袋に入ったブルーベリースコーン。 そして 右隣から聞こえてくる呪文のような呟きに なんとも居心地の悪さを覚え、せっかくの「グアテマラ」が霞むような気にさせられる。 なんだなんだ 今日はツイテるんだがショボいんだか分からない日だな。 チラリと黒目だけを右へやって そこに飛び込んで来たのは山のような消しゴムのカス。 おい ご丁寧に集めてる場合じゃないだろうが。 顔は髪に隠されていて 見えなかった。 手元のノートには数字と記号の羅列。 ……数学か。
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