第1章

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顎のラインが印象的な少女だった。 黒く艶のある真っ直ぐな髪が少しだけかかっていて、そこだけは、大人びている。 まだあどけなさの残る頬はどちらかといえば 怒りと言うよりは不貞腐れたそれ。 気を悪くさせた事は言うまでもない、な。 気付いたように目を細めた先には、山のような消しゴムかす。 キュ、と寄せた眉につられて 髪と同じくらい光のある黒目も目頭へと移動する。 ごくごく普通の少女は こちらを見ることもせずに散らかったテーブルを片付け始めた。 「商の微分公式自体が間違ってるようだね」 突然、と言えば突然だろう。 まだそのままのノートに視線を移し、たくさんの消された跡を確認する。 「x=aでの極値を保つためにf´(a)=0 例えば、f(x)=x3乗はf´(0)=0 この時の商の微分公式は {g(x)分のf(x)}´={g(x)}2乗分のf´(x)g(x)-f(x)g´(x)を適用すると、いい」 自分の取った行動に驚いたのは 公式を全て言い終わった時だった。 テーブル同士の距離は離れていた訳ではなかったから、つい、デキゴゴロで、だな。走り書きの割にはなかなか纏まった字を書けたもんだ。 自然に湧いてくる笑いをそのまま唇に乗せて また、視線を上に戻した。 黒目が中央に寄ったままの、呆気に取られた顔が 堪らなく愉快にさせる。
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