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「何が言いたいんだ、後藤
余計な詮索は好きじゃない」
「いや、室館さんみたいなカッコいい人が
奥さん一筋なのがまた、カッコいいな、なんて
思っただけですよ!」
やっとひと息ついた所で
八寸が運ばれてきた。
豆腐料理をリーズナブルに振る舞ってくれるここは
酒との愛称も頗るいいものを出してくる。
「揚げ田楽が旨いんだ」
「あー、湯葉なんて久しぶりですよ」
暫くは小腹を満たすことに専念したのか
若いながら食が進む進む。
見ていて気持ちのいい食べっぷりだった。
本題に入る前にかなりのアルコールが後藤の身体の中へ収められた。
「お前、帰りは?」
「あー、今日はタクシーです、大丈夫」
「そうか」
「室館さんは?途中まで一緒に帰りましょうよ」
「いや、遠慮する」
なんでですかー、と言う、口を尖らせた後藤を見て、まだ大卒の頃の本人と未だ何も変わらないな、と懐かしく思い出す。
こいつも色んな挫折と苦労を繰り返してきた。
落ち込んだ姿も、立ち直った勢いも全部見てきたな、と。
「あー、室館さん、お願いがあるんですけど」
「そうだった、それを聞きに来たんだ」
このままだと、話は逸れたままか
聞きはぐれるか、どっちかだと思っていたから
ちょうど話題が戻ってきてひと安心だ。
「今のまま、遊ばせてもらっても楽しいんですけどね?
なに、あの、オークションとか!
あれ、ヤケになっちゃうよね?」
「そうか、それは良かった」
「で、マジでちょっと思った事があったんですけど」
「ああ」
空になった瓶をワインクーラーへ伏せて
新しい瓶を取り出し、タオルでその滴を拭った。
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