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「酒、足りるかなぁ」
もう3本目の泡だった。
「足りなかったらまた頼めよ」
「そうですよね?」
嬉しそうに顔を綻ばせた後藤を見て、まだまだ可愛らしいな、という印象をどうしても拭えない。
シュ、と溜息が聞こえて
またグラスに満たされたのは、ピンク。
「ロゼだったのか」
「けっこう好きなんですよ、赤」
どうぞ、と促されて
替えのグラスに入ったそれを受け取り
後藤を再度見た。
「室館さん、お願いします」
スルリと頭を下げた後藤。
「うん、何」
「昨日の彼女、俺に紹介してください」
ほんとに今年度は驚く事ばっかりで
どこをどうしたら50過ぎてこんなに面白可笑しな人生になるんだろうと、グラスの中で弾ける泡を見ながら、考え、確認をする。
「昨日の彼女?」
「はい、室館さんとこの生徒さんだっていう、昨日の彼女です」
そう語った後藤の眼差しは、今日一番の真剣そのものだ。
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