第2章

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初めて会った時もこうだったよな? いや、悪かった。 玉ねぎを置いて冷蔵庫から取り出した箱。 ムクれる彼女の前に立ち 「口、開けて ほら、開けて?」 箱から取り出したひと粒をチラつかせた。 見上げながら、その小さな口が徐々に開いてくる。 二重の瞼もちょっとずつ大きく開けられてその奥の黒い瞳が細かく右往左往した。 指で摘まんだ白地にピンクの渦巻きが乗ったチョコを そこへ放り込み、ニヤリと笑う。 「失礼、不躾だったお詫びです」 あの時のそれも兼ねて。 身体は固まっていても、口だけはモゴモゴと動いている斉藤さんに、どうしても涌いてくる笑いを噛み殺しながら 「ほら、早く、それ3つ作って」 任務遂行を促した。 斉藤さんの活躍?のお陰で、無事に完成した「特製スタミナ丼」。 ワカメスープも添えて、和気藹々とランチタイムに突入する。 元気になった二人とあーでもない、こーでもないと 楽しい時間を過ごしながらまた午後の講義を再開する。 「修造先生、分かった、これ!分かったよ!」 「あー、そうそう、その考え方ができれば問題ない 花丸です」 西野さんも豪快な回答が減り 「積分は計算が長くなるからある程度公式を覚えておいた方が便利だな」 「∫xの二乗分の1dxですか」 「そう、この場合な?xの-1乗にならないように注意して」 斉藤さんはメキメキと基礎力を伸ばしている。 こうなってくると後は経験値を増やす事ができれば ある程度の難問に当たっても応用が効くだろう。 「先生、有り難うございました」 「修造先生、凄い! 本当に、楽しかった!ね、遥ちん!」 充実した二人の顔がなによりだ。 君たちが手応えを掴んでくれる事が一番なんだ。 「それは良かった 少しでもお役にたてたかな」 「たちまくり!」 「なんか、自信ついてきました」 「そうか あ、今日ここで起こった事はシークレットだよ」 「了解です」 頷いた二人は、来た時とはまた違った晴れやかな顔で帰っていった。 お互いに有意義な1日を過ごせたのは間違いない。 彼女たちのニーズに完璧に応えられたか、と言われればそうではないだろうけど、な。 思いの外、刺激的な時間だったなと考えて また勝手に涌いてくる笑いを 今度は我慢することなく、音にする。 今日はよく笑う日だ、心の中でそう呟いた。
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