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有坂皆人くんの憂鬱なる一日 6
油断すれば、美百合との赤裸々な、夜の生活まであきらかにされそうなプレッシャーゲームを、皆人は何とかかわしながら、平和的な話の方向を、手さぐりで探している。
聞いたが最後、後で我に返った龍一に、どんな目にあわされるかわからない。
皆人だって命は惜しい。
なんたって乃亜との、大切な結婚を控えている身体だ。
正直もう、美百合の怒りの原因がどこにあるかだなんて、皆人にはどうでも良くなっている。
とにかく龍一の激情の向かう先が、自分でなく、無事にお家に帰れれば、それだけで十分だ。
そして、その結果が、静かな夜に繋がるのならば、ちょっと俺、悪人どもの救世主じゃね!?
『俺、なんて出来た人間。まるで天使?』
などと考えている皆人に、龍一はいまいち納得していない様子だが、おとなしく皆人の、次の話の展開を待っている。
この兄が、ここまで困惑しているところなんて、初めて見る。
皆人は続けた。
「やっぱり、今回のことで、あんな別れ方をしたのが悪かったんじゃね?」
皆人が龍一を迎えにいった時の、美百合を置いて出る時の別れ方は、皆人の目からみても冷酷なものだった。
龍一が心の中で泣いているのは、こちらにもわかったが、あんな別れ方で、その後、爆死したかもしれないなんてニュースを見せられて、それで放置プレイと来た日には、普通の女性なら怒って当たり前の話だ。
まあ美百合は、普通とはちょっと違うから、こんなにややこしい問題になっているわけだが。
ここは『普通』に着陸させるのも、ひとつの手だと思い始めている。
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