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『ギャー!』
思わず皆人は耳をふさいだ。
確かに一瞬は聞きたいと思ったが、この後に続くのは恐らく、耳にするのもおそろしい身内の艶ごとだ。
龍一のうっすらと赤く染まる頬と、その色っぽい口調が、それを物語っている。
「――後悔しないかと、ちゃんと聞いただろう」
皆人の反応を目の当たりにした龍一は、逆に皆人を非難するかのように、そう言った。
この兄は……。
血を分けた弟に自分の秘めごとを暴露して、一体どうするつもりだったのだ。
『まさか理沙と共謀して、俺を不能に追いこむ作戦!?』
デリケートな乃亜への態度は、理沙からさんざ、乱暴だとかデリカシーがないだとか貶された皆人だ。
それでも、身の内に潜む欲望を必死に堪えて、皆人は出来る限りやさしく乃亜を扱ったつもりだった。
だけどその結果が、乃亜のマリッジブルーに繋がるのなら、皆人にありえないほどのショックを与えて、『不能』へと追い込もうと、理沙が企んだ可能性は拭えない。
イヤもしかすると、いっそのこと禁断の世界に追いやろうと……。
皆人は自分の被害妄想を打ち払うために、頭を振る。
だが龍一の暴露ぶりといい、普段の龍一なら考えられないほどの赤裸々な様子といい、ちょっと皆人の頭の中は混乱状態だ。
しかし龍一の、一瞬、現世を忘れるような艶話を聞いてしまえば、確実に、皆人は『不能』に追い込まれるに違いない。
この『兄』と『ナニ』を比べようと言うのだ!
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