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それを確信したのは、口をパクパクする皆人に向かい、次に放たれた龍一の言葉。
「皆人じゃないが、既成事実でも出来れば、事態は好転すると思ったんだ。
だが、父親の部屋に閉じこもって、顔も見せてくれなくなった」
愛の行為で脅えられるって、いったい何事だよ、それ。
「俺は狙った獲物は逃したことはないんだが……」
いや、だから、狙いとか獲物とか、そういう物騒な思考が通用するとでも、本気で信じてるのか?
『何故、待てなかった?』
と、皆人を貶したのは、どの口でしたっけ?
俺に焦るなって説教かましたのは、一体どなた様でしたっけ!?
もう声に出して突っ込むのも疲れるほど、龍一の発言は突っ込みどころ満載だ。
皆人は、弱弱しく、ひとことだけ告げた。
「……あんた、滅茶苦茶だよ」
龍一は、
『そうか?』
といった風な、まったく自覚している風のない表情。
「帰すつもりはなかったんだが、親元に帰しただけ、俺は冷静だったぞ」
俺の兄貴はこんなおもしろキャラだったのか?
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