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もうここまで暴露されると、いい加減、どうだって良くなってきた。
「んじゃ、父親の部屋に、天岩戸ばりにこもっちゃったみゆっちに、兄貴はなすすべもなくて、この先どうしていいかわからないってわけ?」
皆人の比喩には納得できない風だったが、結局、龍一はうなずいた。
「扉の前で裸踊りしてみせた?」
神話に則った史実を言っただけなのだが、返ってきたのは、氷のような冷たい眼差し。
皆人は慌てて手を振った。
こんな人に、今『バカ』呼ばわりされるのだけは、自分のプライドが許さない。
「ここまで聞いただけでも、ずいぶん原因は見え隠れしている気がするけど……」
思わずため息をついて、提案する。
「ちょっと最初から整理してみようか。もしかすると、兄貴とみゆっち、どっかからやり直せば。
もしかすると……、なんか間違ってでも……、いいアイディアが浮かぶかもしれない」
えらくあいまいな、頼りのない発言だったが、ほとほと困り果てているらしい龍一は、冷めかけたコーヒーを一口ふくんで、皆人の話を聞く姿勢になった。
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