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龍一は懐かしむように、宙を見上げながら続ける。
「その時も三日ほどこのホテルにこもったんだがな。別に美百合は脅えたりしなかったぞ」
「ああ、さいですか……」
アホらしくて聞き流したが、ちょっと待てと舞い戻る。
「え何? 兄貴。前科があるわけ?」
「前科って言うな」
龍一は気にいらなそうだが、それなら話も違ってくる。
龍一の『監禁』というぶっ飛んだ所業を、美百合が過去にも経験済みなら、今回の騒ぎだけで、美百合が脅えて出てこなくなるというのも不思議な話だ。
まさか、さっき冗談で思った、
『色ボケシルバーマンのお手付き説!?』
なんて懸念は、間違っても口には出せない。
「ややこしくなっちまった」
解決策を探るつもりが、迷宮に突き落とされた気分だ。
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