有坂皆人くんの憂鬱なる一日 4

4/7
前へ
/57ページ
次へ
龍一は懐かしむように、宙を見上げながら続ける。 「その時も三日ほどこのホテルにこもったんだがな。別に美百合は脅えたりしなかったぞ」 「ああ、さいですか……」 アホらしくて聞き流したが、ちょっと待てと舞い戻る。 「え何? 兄貴。前科があるわけ?」 「前科って言うな」 龍一は気にいらなそうだが、それなら話も違ってくる。 龍一の『監禁』というぶっ飛んだ所業を、美百合が過去にも経験済みなら、今回の騒ぎだけで、美百合が脅えて出てこなくなるというのも不思議な話だ。 まさか、さっき冗談で思った、 『色ボケシルバーマンのお手付き説!?』 なんて懸念は、間違っても口には出せない。 「ややこしくなっちまった」 解決策を探るつもりが、迷宮に突き落とされた気分だ。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加