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「えっと、今回の『誘拐』もおんなじ感じ?」
念のため尋ねてみると、
「誘拐って言うな」
龍一は気に入らなそうに答える。
「傍に近づいてきたから、捕まえて、さらっただけだ」
世間一般では、それを『誘拐』って言うんです。
「で、肝心のみゆっちは、何も文句を言わなかったわけ?」
そんでもって、ここ大事。
過去と現在に少しでも違うところがあれば、そこから突っ込める。
皆人が尋ねると、龍一は、
「ん?」
と首をかしげる。
「ああ。前の時は、洋服が作業着だとか、長靴がなんだとか言ってたな。
今回は、化粧してないとか、髪がボサボサだとか、他愛もないことだ。特別に重要なことじゃない」
いや、女性にしたら、かなり重要なことですけど?
「前は、あまりに長靴を気にするから、トラックを降りるときに脱がせて、抱き上げてロビーに連れて行ったし、
今回は化粧を気にするから、胸に抱いて、誰にも顔を見せなかった」
「……わあ、強引」
他にどんな言葉が出る?
「そうか?」
龍一は、相変わらずの気のない無表情。
この時点で皆人は、女心を龍一に相談しろと言った理沙に、次は完全勝利できる確信をもった。
女心なんて、絶対わかってねーよ、この人。
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