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「みゆっち、それで怒らなかったの?」
皆人が聞くと、龍一は初めて不安そうな顔を見せた。
「過去は、出会ってからまだ8日目だったから、確かなことは言えないんだが……」
そらそうだ。
期間だけ4年あっても、知り合って10日もたたない相手のことが、どれだけわかるというのか。
「美百合は、出会ってからも再会してからも、ずっと怒りっぱなしだからな。正直、何に怒っているのか、俺にはさっぱりわからない。
美百合は、自分の感情の赴くまま、いつもまっすぐに怒るんだ」
龍一は愛おしそうに言うけれど、残念ながら皆人には理解できない。
怒りっぱなしの彼女って、一体どうよ、それ。
「怒っているのは平気だが、泣かれるのは辛い。前の時には、俺の胸の包帯を見つけて泣かれた」
龍一は言う。
またそこにカムバックですか!
皆人は、油断できないと姿勢を正す。
「俺がいくら大丈夫だと言ってもダメだった。実際、怪我はたいしたこと無かったし、包帯も大げさなくらいだったんだが。美百合の涙は止められなかった」
怪我させた原因の皆人を責める言葉は、とりあえず出ないようなので、ちょっとだけ安堵の息を吐く。
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