有坂皆人くんの憂鬱なる一日 4

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しかし、それもショックだったろうな、と皆人は思う。 今回、龍一を迎えに行った時にも、美百合は、龍一の身を守ってくれと、皆人に切に願った。 力強く約束してやれなかった皆人に、天を仰ぐように号泣していた美百合を思い出す。 「その時に、もう怪我はしないでと請われたんだが、……約束は、してやれなかった」 「なんでだよ! 兄貴はあん時、仕事を引退してみゆっちの所に行ったんだろ。ちゃんと約束してやれば良かったんじゃん」 「俺は嘘はつかない」 ズバリと言われて、皆人はグッと詰まった。 「仕事のことは、もちろん引退したつもりだったさ。今回の事件にも、お前が迎えに来なければ、係わるつもりなんかなかった」 またもや、皆人を責めるかのような際どいセリフに、ゴクリと息を飲む。 だが龍一は、 「しかし人間が生きていて、一生、怪我をしない保証なんてどこにある? そんな不確かな約束なら、俺は美百合にはできない。出来る限りの、精一杯の努力はするがな」 だから今回は怪我なんかしなかっただろ、と龍一は魅惑的に微笑んだ。 腹に爆弾抱えたり、15階からダイビングしたり、かなりの無茶はやったけどね。 しかし口答えをすると、藪から蛇をつつき出しそうなので、言いたいことは胸の中だけに収めておく。 いつか俺、セリフが溜まりすぎて、爆発するかもしれないしね。 皆人は、口をつぐむ代わりに頭を抱えた。 「兄貴は頭が固てーんだよ」 龍一が口にする言葉には、嘘や誤魔化しがない。 それは、もうずっとそうだ。 それは龍一の魅力のひとつでもあるのだが、 「それで?」 先を促す皆人に、 「しょうがないから、3日かけて、美百合に身体で『俺は大丈夫だ』ってことをわからせてやった」 『そこは誤魔化してくれよ!』 またしても聞きたくない話の展開に、皆人は再び自分の両耳を塞いだ。
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