有坂皆人くんの憂鬱なる一日 5

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だが、『何かおかしい』ということぐらいは、感じているはずだ。 今、ハウスの中を空にしている意味も、あの過剰反応ともいえる、網膜認証のセキュリティのシステムのことも。 おそらく龍一は、美百合が納得できる説明など、何ひとつしていないのだろうし、出来るわけがない。 龍一は嘘をつかないから、きっと、その魅惑の微笑みで有耶無耶にしただけだ。 「俺はその時に、一度、美百合に結婚を申し込んでいる」 龍一は言った。 「こんな田舎に隠しても、あんな危険なことに巻き込まれる。真剣に『守りたい』と思った」 龍一の言葉は真摯だ。 きっと、真実の想いなのだろう。 だけど、 「みゆっちは、結婚を承知しなかった、……だな?」 皆人の問いかけに龍一はうなずいた。 なんとなく、わかってきた。
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