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だが、『何かおかしい』ということぐらいは、感じているはずだ。
今、ハウスの中を空にしている意味も、あの過剰反応ともいえる、網膜認証のセキュリティのシステムのことも。
おそらく龍一は、美百合が納得できる説明など、何ひとつしていないのだろうし、出来るわけがない。
龍一は嘘をつかないから、きっと、その魅惑の微笑みで有耶無耶にしただけだ。
「俺はその時に、一度、美百合に結婚を申し込んでいる」
龍一は言った。
「こんな田舎に隠しても、あんな危険なことに巻き込まれる。真剣に『守りたい』と思った」
龍一の言葉は真摯だ。
きっと、真実の想いなのだろう。
だけど、
「みゆっちは、結婚を承知しなかった、……だな?」
皆人の問いかけに龍一はうなずいた。
なんとなく、わかってきた。
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