有坂皆人くんの憂鬱なる一日 5

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「そういえば皆人、お前」 なんだか急激に、辺りの気温が下がってきたような気がした。 「美百合に妙なTシャツを着せて、ジャンプさせたらしいな」 ――シャキッ、 と、ベレッタのスライドを引く音を聞いたのは空耳か? こんな街中で、まさかね。ははは……。 「あ、兄貴、俺ちょっと思いついたことがあって」 皆人の言葉に、龍一はピクリと眉をあげる。 「兄貴の過保護というか、その過激な反応。性格だからしょうがないとは思うんだけどさ。みゆっちが脅えちゃった理由って、それが原因ってことは考えられない?」 皆人の言葉に、何か思い当たることがあるのか、龍一はピタリと動きを止める。 やっぱりあるんだ、心当たり。 「ははははは」 皆人は乾いた笑いをもらした。 もう何を聞いても驚かないぞ、と腹を据える。 「美百合はむかつくウサギが好きなんだが」 ああそういえば、ウサゴンが好きだったな、と妙なTシャツを着ていた美百合を思い出す。 今回も龍一は、美百合にウサゴングッズを贈って、美百合の機嫌を一旦は直したと言っていたではないか。 ウサゴンとは、ニコタンズという野球チームに所属しているマスコットキャラクターなのだが、以前から皆人とも、ちょっとした係わりがある。 好きか嫌いかと聞かれたら、やっぱりむかついている方に針は振れるが、それでも、 「射殺し損ねた」 そこまでじゃない。 「あはははは……」 もう渇いた笑いしか出てこない。 お願い、冗談だよね? 全然、少しも、これっぽっちも笑えないから……。 龍一のいつものヘタクソな冗談だと、誰か言って!
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