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皆人は、なんとか気を取り直して、一応聞いてみる。
「たかがみゆっちがファンってだけだろう。何の罪もない野球チームのマスコットを撃ち殺して、一体どうする気だったんだよ」
まさか狩りか?
ウサギを見ると、龍一の狩猟民族の本能に火がつくのか?
「ヤツは……。ずうずうしくも、美百合と握手しようとしやがった」
その上品な容姿から吐き出されたお言葉とは、とても思えない。
「何があったんだよ。みゆっちと握手しようとしたことだけが、理由じゃないだろ?」
皆人が聞くと、
「やつと一緒に、スイートに泊まるはめになった」
「あ、兄貴にまさかそんな趣味が……」
「死にたいか?」
冗談もほどほどにしないと、本気で殺されそうだ。
「……ま、いいさ。結局、殺らなかったんだろう」
とても、日中の平和な喫茶でかわす会話だとは思えない。
そしてウサゴンは、今も元気にニコタンズの試合の前後で活躍している。
誰も知らない間に、
『あの着ぐるみの中身が入れ替わっている』
だなんて恐ろしい可能性は考えないことにした。
あのウサギ、この兄貴に喧嘩を売るのだから、たいした度胸だ。
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