有坂皆人くんの憂鬱なる一日 5

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皆人は、なんとか気を取り直して、一応聞いてみる。 「たかがみゆっちがファンってだけだろう。何の罪もない野球チームのマスコットを撃ち殺して、一体どうする気だったんだよ」 まさか狩りか?  ウサギを見ると、龍一の狩猟民族の本能に火がつくのか? 「ヤツは……。ずうずうしくも、美百合と握手しようとしやがった」 その上品な容姿から吐き出されたお言葉とは、とても思えない。 「何があったんだよ。みゆっちと握手しようとしたことだけが、理由じゃないだろ?」 皆人が聞くと、 「やつと一緒に、スイートに泊まるはめになった」 「あ、兄貴にまさかそんな趣味が……」 「死にたいか?」 冗談もほどほどにしないと、本気で殺されそうだ。   「……ま、いいさ。結局、殺らなかったんだろう」 とても、日中の平和な喫茶でかわす会話だとは思えない。 そしてウサゴンは、今も元気にニコタンズの試合の前後で活躍している。 誰も知らない間に、 『あの着ぐるみの中身が入れ替わっている』 だなんて恐ろしい可能性は考えないことにした。 あのウサギ、この兄貴に喧嘩を売るのだから、たいした度胸だ。
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