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皆人と乃亜宛てに、有坂龍一と迫田美百合の結婚式の招待状が届いたのは、その一ヶ月後のことだった。
あまりの早業に目を白黒させていると、別封されていた私信に、
『美百合の気が変わるとまずいから急いだ。皆人と乃亜も、引っ越し等の慌しい時だろうが、是非とも出席してもらいたい。
二件に招待状を出すのは面倒だから、早く一緒に暮らせることを祈っててやるよ』
と書いてあった。
「こんな時にまで上から目線かよ。ここまで自己中だとかえってすがすがしいね」
と皆人は苦笑する。
スペースを開けて、文字が続いていた。
『やはり一緒にいることが、何より大切だな』
「なるほど……」
皆人は破顔する。
確かに、美百合が龍一を受け入れてくれた証拠を見せられて、ようやく安堵の息を吐く。
「捨てられなくて、お互い良かったよな、兄貴」
皆人の耳にも、台所で昼食の用意をする乃亜の気配が届いている。
きっと今頃、誰もいなくなった乃亜のマンションのポストに、これと同じ招待状がカタリと落とされたところだろう。
そんな場面を想像して、皆人の顔にも自然と笑みが浮かんだ。
Fin
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