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有坂兄弟の華麗なる一日 1
教会のステンドグラスの下で、白いタキシードを身にまとい、手袋を片手に立っている龍一は、それはそれは絵になる立ち姿だった。
まるで完成された一枚の絵画のよう。
光の差し込み加減も完璧だし、脇に立つ神父の黒服までが、このワンシーンの引き立て役になっている。
出席者の数が少ない新婦側に配慮して、そちらの席に座った女性陣、谷口の妻の多恵はもとより、龍一のことなど見慣れているはずの理沙や日置までもが、うっとりとした眼差しを龍一の方に向けている。
そんな無防備な顔をする女性陣を目にして、皆人は思わず、隣に座る乃亜を見下ろしてしまった。
乃亜までが、龍一に見惚れているような事態なら、後でちょっぴり落ち込むはめになるのだが。
乃亜は……。
幸せそうな顔をして、讃美歌の歌詞カードに目を落としていた。
乃亜の希望もあったのだが、ふたりで静かに入籍を済ませただけで、ちゃんとした結婚式を行わなかったことが、今更だが、どうしても悔やまれる。
龍一の結婚式が終わったら、ふたりだけで式をあげよう。
それが乃亜の心の負担になるようならば、せめて、乃亜にウエディングドレスを着せて、ふたりで一緒に写真を撮ろう。
皆人はこっそり、そう決心した。
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