有坂兄弟の華麗なる一日 1

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急激に日取りが決まった、龍一と美百合の結婚式で、慌ただしく準備が進められてきたとはいえ、式は滞りなく行われるはずだった。 忙しい仕事の合間をぬって、龍一の元上司の桜庭も、時間に間に合い駆けつけて来たし、 谷口の息子の翔馬も、受付で渡された菓子袋に気を取られて、紙袋のガサガサいう音がちょっとうるさいだけで、目立ったイタズラはしでかさない。 さすが兄貴だ。 準備は万端、抜かりはない。 だが、肝心の美百合が、新婦が、いつまでたっても姿を現さない。 とっくに式の開始時間はオーバーしている。 客たちもちらちらと時計を気にして、密かにざわめきだした。 新郎側のゲストは一斉に、 「――逃げられたな」 と思った。
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