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急激に日取りが決まった、龍一と美百合の結婚式で、慌ただしく準備が進められてきたとはいえ、式は滞りなく行われるはずだった。
忙しい仕事の合間をぬって、龍一の元上司の桜庭も、時間に間に合い駆けつけて来たし、
谷口の息子の翔馬も、受付で渡された菓子袋に気を取られて、紙袋のガサガサいう音がちょっとうるさいだけで、目立ったイタズラはしでかさない。
さすが兄貴だ。
準備は万端、抜かりはない。
だが、肝心の美百合が、新婦が、いつまでたっても姿を現さない。
とっくに式の開始時間はオーバーしている。
客たちもちらちらと時計を気にして、密かにざわめきだした。
新郎側のゲストは一斉に、
「――逃げられたな」
と思った。
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