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どうして雨の事を忘れていたのだろうか。
電車が遅延すれば、遅延届をもらい言い訳ができたのだが、残念な事に遅延はしなかった。
08:13発の電車に乗り込めたものの、傘をさしたまま走るのが困難だということに気づくと、眉を寄せてしまった。
同じ車両には数えらるほどしか学生はおらず、同じ制服を着たものは自分を含めて3人。
遅刻は、ほぼ決まったも同然だった。
先ほどまで眉を寄せているだけだった顔が、更に険しくなる。
途端、肩が叩かれる。
痴漢ができる程混んでいなかったため、痴漢ではないだろうと後ろを振り向く。
「そんな睨まないでくれよ。金曜日は悪かったよ。すまん。」
なんとも男らしい声と、由紀が背伸びをしても目が合うか合わないかぐらいの身長、夏を前に既に若干日焼けをした肌の色。
小田十六夜がそこに立っていた。
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