第1章

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私と裕太は保育園のときからの幼馴染で、 家族ぐるみで仲良しだから、一緒に旅行にいったりもしてた。 裕太は昔からほっとけない奴で、甘え上手で、 恋だと意識し始めるまでずっと、可愛い弟みたいに思ってた。 だけど、 中三の引退試合でPKをはずして負けたとき、 裕太が下を向いてこっそり、悔しそうに、泣いているのを見て、 もう、あのチビで馬鹿な弟ではないんだなあ、って。 もう、しっかり男の子してるんだな、って。 夜、いつもなら毎日隣の家の裕太の部屋の窓と私の部屋の窓で向かい合って、 沢山おしゃべりしてた。 でも、その日2時半になっても裕太は部屋の電気はついているのに 話しかけてくることはなかった。 落ち込んでるんだよね、やっぱり。 裕太の家に行こう。 昔からほっとけないんだから、、、。 こういう時に限って、なんで頼ってくれないの、、。 深夜だったから、親を起こさないように恐る恐る裕太の部屋の前に言った。 コンコン 「だれ?ママ?夕飯ならごめんね、ちょっと食えなくって。」 「ゆうた?」 こんな深夜に私が来るなんて、思ってないもんね。 ドア越しに会話する。 「今日は、お疲れ様。」 「ヒナ?え?今二時半だよ?どうしたの?」 「、、、なんでこういうときに限って、頼りにしてくれないの、、。」 「え、、。だって、ヒナに言っても今回の件はどうにもならないでしょ、、。」 「そうだよ。わたしには何にも出来ないよ。」 「、、、ごめん。言い過ぎた。」 「ううん、、。事実何じゃない?」 「部屋はいる?」 「どうせ何にも出来ないよ?」 「じゃあ帰るの?」 「ここにいるよ。私には何にも出来ないけど。 裕太が一人で抱え込まないように、一緒にいることは出来るよ。」 「部屋、入りなよ。」 「、、、ここにいるよ。入らない。」 「なんで?」 「ちょっと、ごめん。、、、今だめ、、。」 私は泣いていて顔がぐちゃぐちゃだったから、見られたくなかった。 「いいよ。おんなじじゃん。」 「、、、良くない。」 私が座ろうとしたそのとき、ドアが開いた。 裕太は私を、部屋に引っ張った。 「痛い、、、。」 「ごめん、、、。でも、、、中に居てくれない?」 「え?」 「一人にしないでよ、、。」 「、、うん。」 座り込む私の背中に裕太が顔を押し付けてきた。
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