きみと僕の答えは蝉時雨の中

4/27
前へ
/29ページ
次へ
自殺についてのニュースを聞くたび、現代人のメンタルを疑う。 僕は、いつかそうなるかも知れないことを気にする。 自分がそうならないとは誰も言い切れない。 わからないから考えて、答のない泥沼に足を踏み入れる。 一方的に止めてしまうこともある。 不謹慎だと責められることもある。 なにも知らないくせにと詰られ、意見を口にすることすら難しいこともある。 けれども彼女は純粋に答を探していたから、僕もそんな彼女に乗せられている。 途方もない探究心に駈られながら悶々とした日々を暮らしていると、人の笑顔が輝いて見えるから不思議だった。 子供の純粋で単純なはしゃぎ声ですら新鮮に感じてしまう。 彼女の質問はいつだって僕の世界を変える手伝いをしてくれている。 いつだったか、彼女は言った。 「太陽はいつ滅ぶのだろう」 高校の帰り道、夕日を眺めていた時だ。 「月はいつ地球を離れるのだろう」 僕が答えないと彼女の疑問は増えていく。 僕はそれを格別嫌だとは思わない。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加