きみと僕の答えは蝉時雨の中

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僕と彼女は高校三年生だ。僕は就職、彼女は大学の普通科を受験することになっている。 来年には離れ離れになるのではないかと危惧していた矢先の質問がアレだった。 何を考えているのか分からない彼女の表情に、膝に置かれた分厚い本。 なんの話かを訊ねると彼女は本を僕に見せて言った。 「今話題の戦争の話。特攻隊の物語」 正直、彼女がそのような話を読むのか気になってしまった。 女の子が読むような話じゃない。 そう思ってしまった。 「私は、知りたいの。どの本にも隠れている真実を。それでも私が求めている答えには出会えそうもないけれど」 「それと、自殺と何か関係があるの?」 「特攻って、自殺でしょう」  彼女はさらっとそう言った。  言葉の意味が解らずに僕は問い返す。 「どうしてそう思うの?」 「書いてあった。この本に。けれど特攻は駄目だとも書いてある」 「だから、疑問に思うんだね?」 「そう。自殺は悪いことかな?」 彼女は本を捲り、はらはらと涙を溢した。
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