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「子ども・・・かぁ・・・」 自分のタバコの火に目を移した。 甘ったるい、ココナッツの匂いに包まれる。 黒に赤い火が誘惑的で、かっこよく見えて、ついつい手を出してしまった種類。 もうここ数年はこのタバコしか吸っていない。 「良くないよなぁー・・・」 とは思いつつ、ここ数年ホルモンバランスの崩れのせいもあって生理は不調を繰り返すばかり。 数ヶ月来ないなんてことはざらで、一時期はピルで調整したりもしていたけれど、この歳と諦めでそれもおざなり。 悪いとは思いつつも、タバコと酒の量だけ増えていく。 たまに来る生理で自分が女だったことを思い出して、重たい生理痛と腰の痛みにテンション下げながら仕事をする。 都合よく、女から男になれるような仕組みがあればいいのにな。 「んなもん、あるわけないか。」 短くなったタバコをあと一度だけど吸い込んで、灰皿に強く押し付けた。 部署に戻ると、課長が書類を見ながら手招きをしている。 あぁいう時はあまりいい報告がない。 軽いため息をついて、課長の席まで向かう。 「はい」 「お前が出した企画書。これまでとコスト面で大きな差異が出てるんだけどな。なんかあったか?」 「今期の藤和の業績的にも低コスト化の方針が出ているようです。」 「なるほど。」 「それに加えて、先日のミスです。あれで、他社との比較検討の話を持ちかけられています。今回は藤和の取引先企業のコストと比較した数字で企画を出しています。」 「・・・んー・・・悪いくはないけどな。」 確かに利益は見込めるが、前期よりも落ちる。 藤和が大きな取引先なだけにその差異はそれだけ大きい。 「これ、通ると思うか?」 「・・・いえ。これまでの利益を考えると難しい気がしました。」 「なら、なんでこれで俺に出してきた?」 「・・・それ以外に道がなかったからです。藤和は今期の新作で大きな利益が生まれることを希望しています。それが軌道に乗るためにうちが尽力したことが含まれれば、うちとしても利潤はかなり出ます。さらに、藤和の新作には今回何社も雑誌広告が使われているのと、サンプルの評判もいい。特に女性からの指示が高いので、軌道に乗るのは早いと思われます。」 「・・・女性ね。」 含みをもたせた言い方の課長に、先を続けろと言われているように感じる。 部署内の視線が私と課長に注がれているのが分かる。 背中の視線が痛い。
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