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「何よ。あんたも?」
「まぁ、ね。」
「ま、私もあんたもそんな年だしね。おめでと。」
「ありがと。」
嬉しそうにハニカムお涼に、悔しいのか嬉しいのかよく分からない感情が湧き上がる。
あぁ、可愛いなぁ畜生。
どこのどいつだ、わたしの同僚を奪った奴は。
「でも、別に辞めることないじゃない。」
「いや、しょうがないでしょう、こればっかりは。」
「同じ会社でもあるまいし。」
「聞いてないの?」
「へ?」
「相手、秋庭くんよ。」
「え?」
「だから、秋庭くんが相手です。ちなみに、できました。」
「えぇ?!」
し、知らなかったぞ、あいつ!!!
いつから?いつから私の同僚と?
ってか、できたって、おめでた?
え?なにそれ、ちょっと・・・
もう、頭の処理が追いつかない。
これまで、入社してから9年間。
お涼とはそういう話になるたびに、お互いに出会いがねぇ~って言いながらため息ついて、居酒屋で酒を飲み交わした仲だったのに。
また、私だけが女になりそこねて置いていかれる。
回らない頭で、また女の私が言う。
「面倒なことも、泣くようなことも私はしたくない。」
「い、いやぁー・・・ビビった。くっそビビった。」
「す、すんません・・・」
「なんであんたが謝んのよ。」
部署に戻ってから、秋庭を連れ出してビルの1階にあるカフェに入る。
事実確認と、一喝してやろうと向き合ったものの、当の秋庭はすっかりシュンとなった子犬状態だ。
「で、いつからなの?」
「え、っと・・・3年前?」
「え、そんな前から?!」
「いや・・・あの、すんません。」
「だから、謝ることでもないでしょうに!で、あんた出来てんのは知ってんでしょうね?」
「も、もちろんっす!!前々から、結婚したいって言ってるのに、涼子さん全然その気もなくって、いつもはぐらかしてて・・・」
「だからって避妊しないでやるのはダメでしょーが。」
「・・・」
言いにくいことなのか、本人はゆっくりと眉毛をハの字にさせてこっちを見上げている。
お涼がどんな気持ちでいたのかは知らないけど、まぁ幸せそうだった。
「いんじゃない。お互いが幸せなら。」
ぱぁっと音がしそうなほど嬉しそうな顔で私を見るこいつに、羨ましいなって思った。
ここまで思い会える二人が羨ましくて、悔しい・・・
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