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「ちょっと、本田さん?」 「・・・なんですか?」 ぶっきらぼうに返事をする本田は、不機嫌そうに自分のネイルで綺麗に整えられた指をチェックしている。 仕事する気あんのか、このクソアマ。 「これ、さっきミスした時も伝えたはずなんだけど・・・」 「あー、すみませーん。」 「やる気ある?」 「・・・すみません」 謝る気ねぇーだろ、こいつ。 「・・・ハァー・・」 「・・・ッチ」 はぁ?!舌打ちしてぇのはこっちだわ! だるそうにわたしの持つ書類を受け取ろうとする本田に、ブチ切れそう。 どうしてこいつにこんな態度取られないといけないんだ? 「いいわ、秋庭にやってもらうから。」 「は?」 「秋庭ぁー!!これ、あんた処理して。」 「え?俺ですか?」 「・・・あの、やりますけど。」 「いいわ、自分の事して頂戴。」 「なにそれ。」 ざわつく部署の人間が、数人ずつこちらに視線を送ってくる。 今日は課長が出張でいない。 その間は私が取りまとめなわけで、私を止める人はいない。 「なにそれって、仕事を出来る人にお願いしているだけよ。」 「・・・当てつけですか?」 「はい?」 「私、女なので。主任みたいに、女捨てれませんし。」 「なんの話してるのよ。」 「仕事じゃなくても、女として必要にしてくれる人が居るので、嫉妬しないでくださいよ。」 ・・・なにそれ。 何の話し始めてんの、このバカは。 頭湧いてんじゃないのか? 勝ち誇ったような顔で、こちらを見る本田は自分の武器をよくわかっている。 左手を上げて、薬指に光るそれをしっかりとこちらに向けてくる。 「私、主任とは違って女なので、寿退社します。」 「・・・あなたがどんな形で退社仕様が勝手だけど、仕事との切り替えくらいできないの?ここは学校じゃないんだから、お給料もらって仕事してるのよ?したいとかしたくないとか、女だからとか男だからとかで仕事は選べないの。やることもやれないあなたに、私をどうこう言われたくないわ。いつまでも子どもみたいなこと言っていい年齢じゃないんだから、出来る仕事して頂戴。」 「・・・っ。なによ。そんなに・・・そんなに自分の男盗られたのが許せないわけ?捨てられたのはあなたでしょ?それを、こっちに向けてこないでよ?!」 ヒステリックに声を荒らげて、本田は荷物をもって会社を出て行った。 もう、何がなんだか分からない。
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