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あれから、部署に戻ると本田は体調が優れないと言って早退していた。 早退したいのは私の方なのに・・・ 「課長、藤和に謝罪行って、式典の手伝いして直帰します。」 「おう、挽回してこいやー」 課長は良くも悪くも私を女扱いしない。 だから、お前の部下のミスはお前のミス。というのをきちんと線引きしてくれる。 でも、それが女になりたがる弱い自分に負担をかける。 「あ、高野ー」 間延びした課長の声に、返事をして振り返る。 「言いたい奴には言わせておけよ。お前はちゃんとしてるんだから。」 あぁ、ずるいんだ。 こうやって、仕事が好きな自分を褒められるとどうしようもなく身体の軸がシャンとする。 こうやって、この人は人を育ててきた。 部下1人1人それぞれにあった、ケツの叩き方をわかっている。 課長はそれだけ言って、手を振ると書類片手に席を離れた。 「あれでバツ二でなければ、大モテなんでしょうけどねぇ~」 「ほんと、間違いないわ・・・って、お涼。こんなところでなにやってんの?」 私のそばには、人事課係長の同期。 人事課の高嶺の花。 戸田 涼子。 実家が老舗の呉服屋ということもあって、あだ名はお涼。 仕事はできる、容姿も申し分なし。 人望も厚いから、係長への昇進もあっという間だった。 「あぁ、大宮課長に呼ばれたのよ。」 「課長に?」 「あれ?聞いてない?」 きょとんとするお涼に、私の表情もキョトンとなる。 「そ。聞いてないなら言わないわ。あんた急いでるんでしょ?」 お涼の意味深な言葉が少し引っかかるけど、そんな悠長なことはしていられない。 これから、ミスの尻拭いとお詫びに行かなければならないのだから。 お涼とはそこで別れて、次回の同期会の参加の有無だけ一応という建前で聞かれた。 去年のあの事から、私は行かないことがわかっているのに。
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