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あんな楽しそうな恋愛・・・どれくらいしてないんだろう。
好きになったり、好きになってもらったり、女でいることのために努力したり・・・
少し前は、もうちょっと女らしかったはずなんだけどな。
29になる1週間前。
これでもかという程長く付き合った彼にこっぴどく振られた。
同じ会社のグループ会社としてそれぞれ別々の会社に入社した彼は、高校時代からなんでもできるやつだった。
生徒会長もして、勉強も出来て、スポーツもできる秀才君。
そんなあいつと大学に入ってすぐに付き合い始めた。
告白したのは私から。
高校の時から好きで、副会長に立候補して少しでも近付こうと必死だった。
たまたま、同じ大学を受けて一緒に合格して、それが嬉しくて告白。
結果は両思いで、大学時代はバラ色。
それなりに喧嘩もしたし、ヤキモチを焼いたりもしたけれど、幸せだった。
好きと言って貰えて、愛されていると思っていた。
就活も、お互いに目指す企業はグループ会社。
私も彼も、すんなりと内定をもらって、二人で将来はどうだって話までして。
ハネムーンの真似事と言って、卒業旅行はタヒチに行った。
本当に順風満帆だった。
ありきたりでも幸せだった。
社会人になって・・・そうなってから、全てが変わってしまった。
私と彼が作り上げてきた10年間は、たった数ヶ月の女に奪われた。
奪われていることに気づいたのなんて、1年も後だった。
私は一人で舞い上がって色んなことを妄想していた、ただの馬鹿な女だった。
あの時から、私は女であることも、恋をすることも、女の自分を維持することも、全てに疲れを感じてしまった。
自嘲気味に笑いが漏れる。
あぁ、何やってんだろう、私って。
バカみたい。
感傷に浸っちゃって・・・そんな暇も、歳でもないくせに。
会社の最寄りで降りてから、振り返った電車の中に見えたさっきのカップルは、混んだ電車の中彼女を気遣って支える彼氏の姿が見えて、また気持ちがガンと少しだけ下がってしまったように感じた。
金曜日の夜。
帰りの家路を急ぐ男たちと女たちとは逆方向に体を向けている自分に、どうしようもなく「仕事人間」の自分を感じた。
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