第7章 沈みゆく意識の中で

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「ん?どうしたマコト。何か見つけたか?」 老人、恐らくゲンゾウという名前だろう、彼がマコトの方に振り向くと聞いた。マコトは黙って僕を見ると、ゲンスケも僕の方を見た。 「えっと、あの、僕は……」 「ほう、こいつは珍しいな。ここに生きた人間の魂がやってくるとは」 僕の言葉を遮り、ゲンゾウは言う。しばらく僕は黙っていたのだが、やがて頭が言った言葉を理解した。 「え、いや、まさか……。ここって地獄ですか!?ということは僕はやっぱり死んでしまったのか……」 「あほう、お前さんはまだ死んでおらんわ。ここに来るのは死んだ人間の魂だけで、そいつは生前生きてた奴の体の形などなってないわ」 ゲンゾウは呆れながらそう言うと、ある場所を指さして僕に示す。僕もつられて見ると、深い霧の海に何かが見えている。 「あれは、何だ……?白い塊みたいなものが……」 「あれが魂だ。海で不慮の事故に遭い、亡くなった人の魂がここに流れ着くのだ。さて」 そう言うとゲンゾウは釣糸を海に垂らす。すると魂のいくつかが釣り糸に寄ってきて、まるで魚のように食いついてくる。ゲンスケが釣り糸を上げると、複数の魂が釣り上がる。 「やれやれ、今日も大量に釣れたもんだな……」 ゲンゾウはそう呟きながら、魂たちを近くに置いていた籠に入れる。籠の中にはすでに多くの魂が入っており、ゆらゆらと蠢いている。 「それが、海で亡くなった人の……」 「今日一日でこれだ。いつもより少し多いかもな……。マコト、運んどいてくれ」 「あ、はーい」 マコトは自分の身の丈ほどの籠を抱えると、どこかへ運んでいった。それを見送り、改めて僕は聞いた。 「それでさっきの話ですけど、僕は何故死んでいないのにここに来ているんですか?」 
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