2 課せられた刻

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「保、お前呑気なこと言ってんじゃねぇ。ひとりじゃ立つことも出来ねぇだろーが」 ひとりで行くと言った側から、保はバランスを失っている。 ソファーの背もたれに危うく手をついて、かろうじて転ぶのは免れた。 しかし、 「さわるな」 手を貸そうとする高広を頑なに拒む。 そして、 「今なら力づくで言うこときかせられると思ってんのか? これ以上近づいてみろ。すぐ舌噛み切って死んでやる」 まるで『あっかんべー』するように出した保の舌は、高熱のためか真っ赤になっている。 しかし赤い舌を出しながら睨み付ける保の目は本気。 高広が無理に動けば、保はためらうことなく、己の舌を喰いちぎるだろう。 高広は腰をひく。 その様子を悟った保は、 「それでいい高広」 いつもと同じ、糸のように目を細めて笑って、 「そのシケた面どーにかしとけ。男の泣きっツラなんか御免こうむる」 よろける足を引きずり、ひとりで地下への階段を降りて行った。
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