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両の拳を突き出したまま、まっすぐに高広を見つめる龍一の茶色の瞳は、わずかにも揺らぐことはない。
どうやら冗談を言っているわけではなさそうだ。
証拠に、
「だが俺が勝ったら、お前にもひとつ、いうことを聞いてもらう」
高広が予想した通りの条件を出してきた。
おそらくそれは、抗ウイルス薬の研究の続行。
「お前が俺に勝てるわけねーじゃん。俺を誰だと思ってんの?」
高広はわざと顎をあげて、龍一を見下しながら問う。
すると龍一は、
「世紀の天才さまだろ」
しれっと答えてから、
「選べ、腰抜け」
再び、握った拳にぐっと力を入れてみせた。
はっきりと高広を挑発する龍一に、高広は、
「……にゃろう」
腰を動かしてソファーに座り直す。
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