2 課せられた刻

1/6
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ

2 課せられた刻

保の身体は急激な発熱、関節痛、背部痛、発汗の症状を現した。 潜伏期間など何もない。 倒れるなり、いきなりの発症。 潜伏期間ゼロだなんて感染症、これまで聞いたこともない。 だからこそ、この細菌ウイルスは恐ろしいのだ。 高広は保をすぐさま地下の治療室に隔離する。 驚くべきことに保は、高広が注射跡を確認するなり、高広の身体を振り払い、 「俺に触るな。これ、伝染るんだろう」 言い放つ。 マスクの代わりに手のひらで覆った保の顔は、すでに血の気を失って真っ青だ。 それなのに、 「俺はひとりで地下に行く。高広お前は、防護服を着ろ」 どうやら近藤の話を盗み聞きしていたらしい。 しかしこの場合、保の指示が正解。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!