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2 課せられた刻
保の身体は急激な発熱、関節痛、背部痛、発汗の症状を現した。
潜伏期間など何もない。
倒れるなり、いきなりの発症。
潜伏期間ゼロだなんて感染症、これまで聞いたこともない。
だからこそ、この細菌ウイルスは恐ろしいのだ。
高広は保をすぐさま地下の治療室に隔離する。
驚くべきことに保は、高広が注射跡を確認するなり、高広の身体を振り払い、
「俺に触るな。これ、伝染るんだろう」
言い放つ。
マスクの代わりに手のひらで覆った保の顔は、すでに血の気を失って真っ青だ。
それなのに、
「俺はひとりで地下に行く。高広お前は、防護服を着ろ」
どうやら近藤の話を盗み聞きしていたらしい。
しかしこの場合、保の指示が正解。
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