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1 持ち込まれたウイルス
発端は、秋場家のチャイムが鳴ったことから始まる。
「はいはーい」
秋場家の主夫を預かる有堂保がいつもの調子でドアを開け、
「どなた?」
誰何すれば、そこには顔色の悪い、フレームのないメガネをかけた細面の男が立っていた。
「……秋場高広さん?」
男は震える声で尋ねながら、すがるように保を見上げてくる。
保は主夫だが番犬も兼ねている。
通せんぼするように玄関の入口を身体で塞ぎながら、
「俺は家主じゃない。それに悪いけど身元不詳の相手といちいち会うほど、あいつは暇じゃないんでね」
表面だけの愛想笑いを浮かべる。
保の身長は186センチ、並みの日本人よりは高いし、鍛えているお陰で体格も良い。
目の前で今にも死にそうな顔をして立っているこんな青びょうたんには、どう考えても負ける要素などなかった。
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