目隠ししよう

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両親が流行り病で亡くなった時、俺は泣かなかった。 目の淵の涙は、今にもこぼれ落ちそうなほど溢れていただろう。 それがどんなに不格好なことだと知っていながら、俺は決してなくまいと唇を噛んで耐えていた。 兄は子供のように大声で泣き、俺以外のその場にいた親族全員が耐えることなく涙を流していた。 俺が泣かなかった…… 泣きたくなかったのは俺の服の裾をつかむ小さな弟の手が俺を頼っていると思っていたからかもしれない。 だから俺は泣きたくなかったのだと思う、ちっぽけな兄のプライドを守るために。
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