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後ろを振り返ると端正な顔立ちをした男の子が立っていた。制服を見るに、隣町の学校の生徒のようだ
「もしかして驚かせたかな? いきなりごめんね。ここに人が来るの珍しくて声かけちゃったんだけど……」
わたしは声の主が生きている人で安心して不意にも涙がでてしまった。普段ならこんなことくらいで涙はでないけれど、今のわたしの精神状態はとてもいいとは言えなかった。
わたしの涙を流す様子に男の子がとても慌てて「本当にごめん」と謝ってきた。
その様子にわたしは首を横に振った。
「こちらこそすいません。ちょっとビックリしちゃって……」
手で涙を拭いながら答えると男の子はハンカチを差しだしてきた。
「驚かせるつもりはなかったんだ。よければこれ使って」
「ありがとうございます……」
差しだされたハンカチを受けとりわたしは涙を拭う。ハンカチから漂うほのかな石鹸の香りに少し心が落ち着いた。
「えっと……いきなり質問で悪いんだけど何かあったのかな? 花を供えて手を合わせてたみたいだけど。もし良ければ話を聞くよ」
男の子はそう言ってしゃがみながら安心させるような笑顔でわたしに目線を合わせてくれた。
『俺でよければ話を聞くよ』
わたしはその優しい言葉に止まりかけていた涙が溢れてしまった。
普通だったら、こんな幽霊がでると噂される場所に手を合わせていれば誰だっておかしな人だと思って見て見ぬ振りをするだろう。
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